第45話   ワラジ竿             平成28年03月31日  

 ワラジ竿とは何ぞや?
 字から連想するが如しである。
 秋になると磯場に行って、シノコダイ(黒鯛の当歳魚)やクロコ(メジナの当歳魚)を釣って、出汁や唐揚げにして食す風習がある。それをするには楽しむ釣りと云うよりも、数を釣らなければならない。長さにして一尋以内の竿を使う。一尋以内の竿を一本、上手な人は二本を使いこなす。一匹が釣れるともう一本はワラジに挟み魚を取り込むことになる。そんな事で、通称ワラジ竿と呼ばれるようになったのである。
 昨年9月本間美術館に展示された竿の中に、通称ワラジ竿と呼ばれたものがあった。良く見るといずれも細く短い竿で明治初期から中期の竿である。小竿を自在に使いこなす熟練の技がなければ自分の物には出来ない。主としてクロコを釣ったものと考えられる。クロコは風が強く波がある日に食いが立つ。その為堅く、細くそして短い竿が好まれた。短い竿であるから手返しが、楽で数釣りが出来る。
 鶴岡の釣人たちは、秋の風物詩としてシノコダイ釣とクロコ釣りを楽しんだ。そして釣った魚を女子衆は一晩かけて素焼きし、翌日から二~三日天日で乾かした。二百~三百と数が数だけに大変な作業であった。

下から5尺四寸、五尺五寸五分の二本がワラジ竿と呼ばれた竿
上の三本はシノコダイ竿、タナゴ竿で 、六尺から八尺の竿で、ワラジには挟むのは難しい。